13世紀、現在の中国西北部に実在した西夏文字をめぐる歴史ロマン『シュトヘル』と、教科書に掲載されたことで”国民的文学”の地位にある短編『山月記』には共通点がある。
どちらも『文字』をテーマにしている点だ。
『山月記』は『孤憑』『木乃伊』『文字禍』三篇の短編とまとめて『古潭』と呼ばれる連作の一つだ。
『古潭』については、『論攷 中島敦』(木村瑞夫著)等で、「文字」によって中島敦自身の「魂」の永遠化願望を実現しようとする取り組みが指摘されている。
中島敦は『古潭』のなかで、いかにして文字で”一己の魂”を永遠にしようか模索していく。
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